当科の紹介

PICUグループ

グループ活動ダイジェスト

令和5年4月に新規診療グループとして誕生した当班ですが、令和6年度から3名(10月から4名)体制となります。
北大小児科関連各地域において専門的な基礎疾患を抱えた小児患者が存在し、基礎疾患のない小児よりも圧倒的に入院率が高く、管理には専門性が求められます。北大病院は複雑な病態の絡む急性期治療において専門性を担保しながら診療する場であり、地域にとっての最終搬送施設であるべきですが、病床数の問題や搬送の困難さなどから、各地域の皆様にご負担をおかけしており、何とかならないものかと歯痒い思いをしてきました。一方で、院内においては、医療安全と働き方改革を重視する潮流にも乗らなければなりません。各グループが少人数で重症患者を夜通し管理することが許されない時代です。各地域と大学病院内のニーズに応えつつ、同時に求められる科学・教育機関としての機能を兼ね備えた小児集中治療施設設立を目指した診療グループです。
令和13年予定の北大新病院でのPICU 8床運用開始を目指し、現在 北大本家ICU内で人材育成を行いながら、本家ICU増床実行(令和5年秋open ICU 3床増床)に携わり、段階的なPICUへの施設拡充を進めています。令和5年に行いましたクラウドファンディング(小さな命に寄り添い続ける。北海道で『小児集中治療室 PICU』設立を)でいただいた多くの御支援を人材育成に運用してまいります。現在までに1名が日本集中治療医専門医を取得しました。また、日本集中治療専門臨床工学技士、日本集中治療専門理学療法士がそれぞれ1名ずつ誕生しております。さらに、日本集中治療医学会認証看護師取得に向けて2名の看護師が名乗りを上げてくれています。
令和6年4月より手稲渓仁会病院こども救命センターを中心に「北海道重症小児レジストリ研究」を開始しました。道内重症小児患者の搬送・集中治療室入室の現況を調査し、道内重症小児患者の搬送方法の適正化を目指してまいります。道内各地域の重症小児患者受け入れを達成し、小児科各グループ診療の医療安全・働き方改革にも貢献していく所存です。

所属メンバー

泉 岳(集中治療部助教)
日本小児科学会 専門医・指導医
日本集中治療医学会 専門医
日本小児循環器学会 専門医・評議員
        同 2021- Associate editor
        同 2021-2023薬事委員会
        同 2023- 形態登録小委員会
               不整脈材料機器委員会
日本不整脈心電学会 専門医・評議員
        同 植込み型除細動器/ペーシングによる心不全治療研修修了
        同 植込み型デバイス委員会 小児・先天性心疾患部会員
日本成人先天性心疾患学会 専門医
日本小児心電学会 幹事
日本循環器学会 北海道支部ACHD協議会 幹事
日本先天性心疾患インターベンション学会
小児循環器集中治療研究会

白石 真大(医員)
日本小児科学会 専門医・指導医
日本小児循環器学会 専門医・評議員
日本集中治療医学会(専攻医)
日本循環器学会
日本心臓病学会
日本高血圧学会
PALSプロバイダー

佐藤 逸美(医員)
日本小児科学会 専門医・指導医
日本小児循環器学会
日本集中治療医学会
人類遺伝学会(臨床遺伝専攻医) 

診療実績

(2023年集中治療部)
入室患者数 650名
小児および先天性疾患関連成人入室患者数 118名
重症度スコア APACHEⅡ 中央値〔IQR〕 16〔13, 21〕
人工呼吸器装着例 381名
ECMO装着例 12名
IABP装着例 10名
Impella装着例 3名
血液浄化法実施例 72名

・小児および先天性疾患関連成人入室内訳(重複あり)
  心疾患 98(先天性心疾患手術、術後不整脈、心不全など)
  肺疾患 1(先天性気管疾患、肺高血圧症など)
  腎疾患 1(腎不全、ネフローゼ症候群など)
  消化管疾患 6(先天性消化管疾患、消化管出血など)
  血液疾患 1(白血病、リンパ腫、臍帯血移植後など)
  脳神経疾患 5(腫瘍手術後、てんかん重積など)
  肝疾患 1(肝硬変、肝不全など)
  免疫疾患 0(膠原病、免疫不全など)
  その他 5
・成人入室内訳
  心疾患 203 呼吸器疾患 43 消化器疾患 180 脳神経疾患 12
  リウマチ・腎臓疾患6 血液疾患 5 頭頸部疾患42 その他 35

研究

「毛細血管グリコカリックスと先天性心疾患周術期合併症の関連調査研究」
「Arch repair後の周術期肺出血リスク因子解析研究」
「遺伝学的異常を背景に持つ患者の周術期における生体反応の変化と合併症発生に関する研究」
「Fontan循環における微小循環障害に関する研究」
「主要体心室がFontan周術期経過に与える影響に関する研究」
「体肺シャント周術期に生じる肺高血圧クライシスの危険因子に関する研究」
「Fontan手術後の適正な人工呼吸管理に関する研究」
「敗血症性播種性血管内凝固症候群に対するアンチトロンビン製剤至適投与量決定のためのグリコカリックス障害評価に関する研究」
「ICU内騒音が集中治療後症候群発症に与える影響に関する研究」
「先天性心疾患術後の過大腎クリアランス発生時期と期間に関する研究」

業績

(2022年以降)
学会発表
1. 泉岳, 斉藤仁志, 加藤裕貴, 水野谷和之, 糸洲佑介, 西川直樹, 武田充人, 山澤弘州, 加藤伸康, 森本裕二:大動脈縮窄・離断症に対する大動脈弓形成手術後気道出血発症のリスク因子 第50回日本集中治療医学会, 京都, 2023
2. Izumi G, Takeda A, Yamazawa H, Kato N, Kato H, Tachibana T, Sagae O, Yahagi R, Maeno M, Hoshino K, Saito H: Excellent abstract session,“Perioperative junctional ectopic tachycardia associated with congenital heart disease: risk factors and appropriate interventions”22th Korean Society of Intensive Care Medicine and Japanese Society of Intensive Care Medicine Joint Congress, Sendai, Japan, 2022
3. 泉岳:「小児心電学のいろは」心電図(12誘導・ホルター・ILR)のいろは 第15回静岡小児不整脈セミナー,静岡,2022
4. 泉岳, 武田充人, 山澤弘州, 永井礼子, 佐々木大輔, 辻岡孝郎: 単極誘導と双極誘導の局所興奮時相差を指標にした完全大血管転位症術後心室期外収縮アブレーションの一例 第26回日本小児心電学会, 大阪, 2022
5. 泉岳:1枚の心電図から始まる電気生理学 1枚の心電図から:ペースメーカー 第16回小児不整脈セミナー, 静岡, 2023
6. 泉岳:小児領域のデバイス治療の現状と展望:低体重児のICD 第16回植込みデバイス関連冬季大会 シンポジウム1, 広島, 2023
7. 泉岳:心臓突然死から生命を守る!愛する人の命を救うためにAEDを知る
学校とAEDについて 第69回日本不整脈心電学会学術大会 市民公開講座, 札幌, 2023
8. 泉岳: 特別講演 小児アブレーションのすゝめ  “小児不整脈概論/ABLのメリット” 実際の症例提示とその効果 , 第27回日本小児心電学会学術集会, 広島, 2023
9. 泉岳, 白石真大, 斉藤仁志, 加藤裕貴, 糸洲佑介, 西川直樹, 武田充人, 山澤弘州, 加藤伸康, 森本裕二:体肺シャント周術期に生じる肺高血圧クライシスの危険因子:単施設後方視的観察研究 第51回日本集中治療医学会, 札幌, 2024
10. 松村優, 泉岳, 白石真大, 斉藤仁志, 加藤裕貴, 糸洲佑介, 西川直樹, 武田充人, 加藤伸康, 森本裕二:主要体心室がFontan周術期に与えるインパクト 第51回日本集中治療医学会, 札幌, 2024
11. 白石真大, 泉岳, 斉藤仁志, 加藤裕貴, 糸洲佑介, 西川直樹, 武田充人, 山澤弘州, 加藤伸康, 森本裕二:Fontan循環における血管内皮グリコカリックスの検討 第51回日本集中治療医学会, 札幌, 2024

論文
1. Izumi G, Takeda A, Yamazawa H, Kato N, Kato H, Tachibana T, Sagae O, Yahagi R, Maeno M, Hoshino K, Saito H: Perioperative junctional ectopic tachycardia associated with congenital heart disease: risk factors and appropriate interventions. Heart Vessels 37,1792-1800,2022.
2. Izumi G, Takeda A, Yamazawa H, Nagai A, Sasaki D, Sato I, Kato N, Tachibana T: Usefulness of prolonged PR interval to predict atrial tachyarrhythmia development following surgical repair of Tetralogy of Fallot. Am J Cardiol 2022; 184:127-132.
3. Izumi G, Takeda A, Okamoto T, Shida S, Matsuo H. A case of tachycardia-induced acute kidney injury by renal hypouricemia.
4. Fukuyama M, Horie M, Kato K, Aoki H, Fujita S, Yoshida Y, Sakazaki H, Toda T, Ueno M, Izumi G, Momoi N, Muneuchi J, Makiyama T, Nakagawa Y, Ohno S. Calmodulinopathy in Japanese children -Their Cardiac phenotypes are severe and show early onset in fetal life and infancy. Circ J 2023; 87: 1828-1835.
5. Chiba Y, Izumi G, Takeda A. Atypical sites of twin atrioventricular nodes in a rare form of univentricular heart. Pacing Clin Electrophysiol 2022; 45: 1225-1228.
6. Shiraishi M, Sasaki D, Hibino M, Takeda A, Harashima H, Yamada Y. Human cardiosphere-derived cells with activated mitochondria for better myocardial regenerative therapy. J. Control. Release. 2024 367:486−499.
7. Sato I, Hibino M, Takeda A, Harashima H, Yamada Y. Activation of mitochondrial oxygen consumption rate by delivering coenzyme Q10 to mitochondria of rat skeletal muscle cell (L6). J Pharm Sci. 2024 S0022-3549(24)00041-8. (online ahead of print)
8. Sato I, Takeda A. Long-term survival case with severe infantile Marfan syndrome: A case report. Pediatr Int. 2023 65(1):e15571

書籍
1. 泉岳:「ミトコンドリア病診療マニュアル2023」診断と治療社(2023年6月出版)ミトコンドリア心筋症CQ20 ミトコンドリア心筋症に合併する不整脈のその治療は?

学生さん&研修医の先生方へ

 今のところ当班は皆循環器グループ出身ですが、さまざまな分野からの集中治療への参画をお待ちしています(一緒に2つ目のサブスペシャリティー獲得を目指しましょう)。一定期間に限った研修でも構いません。日勤・夜勤の完全二交代当番制でメリハリの効いた職場であり、時間外コールはありません。本家ICUには生理学・薬理学のプロフェッショナルである麻酔科だけでなく消化器外科・心臓血管外科・救急科・循環器内科の各専門家や集中治療に精通した看護師・薬剤師・臨床工学技士・理学療法士など各スタッフが互いにリスペクトしあいながら成長できる土壌があります意識状態評価、人工呼吸管理、循環作動薬の選択、ECMO管理、腎代替療法管理、輸液・栄養管理などの知識と実践の理解の隙間がみるみる埋まっていきます。また、これからサブスペシャリティー研修に入る先生の入班も大歓迎です。病態評価・治療の責任はICU教官が担当しますので、未経験でも安心して研修に入ることができます。また、他科やコメディカルとともに下記のような多くの研究を行っています。希望に合わせて国内PICU主要施設への国内留学や学位取得も可能です(下図)。


          共に“北大にPICUを!”               (文責:泉 岳)