エコチル
山口 健史 先生北海道大学 2008年(平成20年)卒業
自分は新生児も心臓も腎臓もなんでも診ることができる小児科医になりたいと思い入局しました。3年間の後期研修後、ほとんどの小児科医が超低出生体重児、1型糖尿病、ネフローゼ、ITP、てんかん、心房中隔欠損症など、非常に幅広い領域の基本的な管理を一人でもできるようになるのは、北大小児科プログラムの大きな強みの1つです。その後に幅広いサブスペシャリティの選択肢があることも大きな魅力です。
私は2021年1月に環境健康科学研究教育センターに異動し、主に2つの出生コーホートを基盤として、実際の調査や疫学研究を行っています。1つ目は、2011年に環境省が開始した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」で、全国15地域、約10万組の子どもとその両親を対象とした疫学調査です。調査票や母体血・臍帯血などの生体試料などを用いて、胎児期から前向きに追跡し、環境と子どもの健康を調査しています。2つ目は、エコチル調査より10年早い、2001年に開始した全道約2万組を対象とした「環境と子どもの健康に関する研究・北海道スタディ」で、我が国の先駆的な大規模出生コーホートで、エコチル調査のモデルにもなっています(詳細は、当センターホームページ https://www.cehs.hokudai.ac.jp/をご参照ください)。
小児期の成長・発達障害やアレルギー、成人期のがんや糖尿病などのNon-Communicable Diseases、社会問題となっている肥満や精神疾患など、多くの疾患は多因子疾患です。自分は大学院で、遺伝要因100%の単一遺伝子疾患を研究してきましたが、卒業後は多因子疾患について、環境要因の側面、あるいは当センターでも力を入れているGene-Environment Interactionについて一から学びたいと考えるに至りました。化学物質や社会・生活要因などの環境要因、SNPやメチル化などの遺伝要因、統計学的手法を用いた疫学的研究などに興味がある若手の先生はぜひお声がけください。